竜に選ばれし召喚士は口説き上手な外交官に恋の罠に落とされる
「僕が率先して……? いや……とても、残念なことにまったく覚えてはいない。あの後、君に避けられていたから……他の女性とそういった事をしたのを知られていて、嫌われたのかと……思っていた……もしかして、その時に何かひどいことを?」

「そんなことは……全然なくて、すごく気持ち良いだけでした。私初めてだったけど、話に聞いていたように痛いことなんてまったくなくて」

 顔を赤らめて話すナトラージュの隣へと座って、彼は微妙な顔でため息をついて頷いた。

「そうだよね……そうだ。君は絶対に処女だと、思っていた。そうして、それを奪ったはずの僕にはその記憶がない……信じ難いことに」

「私、その一回だけで、ヴァンキッシュ様の事を忘れようと、あの時思っていたんです。けどすごく気持ち良かったから、これは忘れられないなってそう思っていたんです」

「……そう。君がそれ程までに、気持ち良かったのなら……良かったと思う。けれど、それを覚えているのは、君だけなのは……不公平だと思わない?」

「ヴァンキッシュ様?」

「ねえ。ナトラージュ、その時のことを再現して欲しい。そんな大事な夜の記憶がない、可哀想な僕にもわかるようにじっくりと」
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