竜に選ばれし召喚士は口説き上手な外交官に恋の罠に落とされる
(夢……そうだよね。お姉様が、嫌っている私に会いに来るはずがない。お姉様が欲しかった物を、何回も横取りして……嫌われて当然の事をしてしまったんだもの。きっと、それは……もう許しては貰えないだろう)

 ぼんやりと、ラスが幻獣界からやって来た三年前の出来事を思い出した。

 ナトラージュの実家であるリンゼイ伯爵家には、幻獣界最下層に住む闘竜の内の一匹、ラスの父親と古き時代に友となり盟約を交わした祖先が居た。

 闘竜は竜族の中でも力が強く、寿命も非常に長い。よって、世代交代も少ない。だが、もし自分に子どもが産まれたら人界で社会勉強をさせる代わりに、|縛られし者(リガート)として、子孫であるリンゼイ家の召喚士が生きている間は守護を与えようという約束を交わした。

 偉大な召喚士であったというリンデント初代王が呼び出したという、聖獣ロスアラミトスが守るこの国でも、国に仕える召喚士の数は多くない。召喚士になれる特別な素質を持つ者自体が非常に少なく、とても貴重な存在だ。

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