竜に選ばれし召喚士は口説き上手な外交官に恋の罠に落とされる
 まずは一つ目の一階層の鍵、二つ目の小妖精、三つ目の無作為の円も順繰りにゆっくりと光を帯び始める。誰かが呼びかけに答えた証拠だ。

 ピクシーは幻獣界の中で一番に簡単な召喚相手だ。それでも、まだまだ見習いのナトラージュにとって、自分は召喚師だと自覚出来る貴重な瞬間。

 召喚陣全体を包んでいた真っ白な輝きが収まると、真ん中に羽根が生えている小さな女の子が見えてきた。幻獣界の入り口付近にあるという、広大な花畑に住むという小妖精ピクシーだ。

(こんにちは。ナトラージュ。お招きありがとう)

「こんにちは。こちらこそ。招きに応えてくれて、ありがとう」

(とっても、良い天気ね。それに良い風!)

 今回呼びかけに応えてくれた彼女は、性質が明るくて機嫌も良さそうだ。何枚もに重なった半透明の羽根を、はためかせて踊る。

 彼女を呼び出した召喚陣を壊さないようにナトラージュは、慎重に後ずさった。ゆっくりと移動して、芝生で寝ているラスの隣に座ると、歌いながら踊る陽気なピクシーの踊りを鑑賞することにした。

(すごく綺麗……心が洗われる光景って、こういうことを言うのかな……)

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