竜に選ばれし召喚士は口説き上手な外交官に恋の罠に落とされる
 下着姿になったナトラージュは無言で脱いだ服を隣の空いたベッドに無造作に置き、苦しんでいる彼が寝かされているベッドの四方を囲っていた白いカーテンを開いた。

 先ほどに何人かの男性に運び込まれる際に見た時より、顔色は悪い。毒のせいか、嫌な呼吸になっている。

(……あまり、猶予はない。急がなくちゃ)

 初老の医療士は、手取り早く事に運べるようにと、彼は既に全裸にしていると事務的に教えてくれた。

 目を閉じたままのヴァンキッシュに掛けられているうすい上掛けを捲れば、人と会話するのが仕事と言っていた人間とは思えぬ程に、身体中しなやかに鍛えられた筋肉で覆われ背中にある怪我を治療するために包帯を何度か巻かれた上半身が見える。

 こんな事態だと言うのに、ナトラージュは思わず息をついてしまった。

 何処にも布も飾りも身につけていないのに、思わずため息を付いてしまうくらいに美しい肉体だった。彼は私のものだと、口汚く罵り合う関係を持ったであろう令嬢たちの気持ちがわかるような気がした。

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