竜に選ばれし召喚士は口説き上手な外交官に恋の罠に落とされる
 ひと時でも熱っぽく見つめられ愛を語られれば、もしかしたら、と夢見てしまう。自分こそが、数多の花を渡り歩いた彼の終着地ではないかと。

「ヴァンキッシュ様……本当に、ごめんなさい……こんなことになって」

 今謝罪したとしても、もう彼には何も聞こえていないのはわかっては居た。だが、そう言わずにいれなかった。

 ヴァンキッシュは危機に陥ったナトラージュを、身を挺して庇ってくれた。けれど、偶然でどうしようもない事態ではなく、あれは紛うことなく、ナトラージュのミスが引き起こした危険だった。

 そっと芸術的な曲線を描く白い肩に触れれば、彼の体はビクッと反応を示した。

 するりとした滑らかな人肌は目に見えて赤くなっていて、身体の中に居る有害な毒を追い出そうとしてか、とても熱い。

「……んっ……」

 ヴァンキッシュは目を固く瞑ったままで、低く呻き声を上げた。

(急がなきゃ……)

 こうしている間に、彼の命が危ない。

 ナトラージュは躊躇う気持ちを捨てて、白い上掛けを下半身からも取り払った。

 処女のナトラージュが、今まで見たこともなかったものが、そこには鎮座していた。

< 96 / 228 >

この作品をシェア

pagetop