殺すように、愛して。
 俺は生かされ、雪野は死ぬ。黛が、雪野を殺す。それで番を解消し、俺を噛んだ奴を消し、俺は黛以外に噛まれた、噛ませた罰として黛に弄ばれる。首を絞められ、拘束され、目隠しをされ、嘔吐させられ、殴られ、蹴られ、踏まれ、舐められ、組み敷かれ、触られ、愛でられ、攻められ、壊される。未経験のプレイをも想像して体を熱らせてしまう俺は、顔を出し始める期待と興奮を抑えられなかった。虐げられて、高揚する。それが俺の、性的倒錯なのだと言わざるを得ない状態。

 黛。黛。黛。まゆずみ。俺、おれ、だまって、いいこで、わるいことしても、いいこで、まってるから。黛。まゆずみ。まゆずみ。おれは、わるいこで。いいこで。まゆずみ。まゆずみ。さびしい。はやくもどってきて。

 その場に彼はいなくても、頭の天辺から足の先まで、じわじわと支配されていくような惚けた感覚に包まれる。黛の声や体温は毒で、瀬那と呼ばれる度に、可愛いねと触られる度に、有毒なものが全身に広がり、脳に害を与える。妄想だけで、毒が回る。もう、俺には、黛がいればいい。黛さえいればいい。それでいい。それがいい。まゆずみ。まゆずみ。まゆずみ。たくさんあいして。おれをあいして。あいして。まゆずみ。
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