殺すように、愛して。
『瀬那、可愛いね。必死になって、自分を縛ろうとして、可愛いね』

「あ、あ……、まゆずみ……」

『できなかったら、目隠しでもして待っててね』

「あ、ん、ん、わかった……」

 両耳を犯す黛の声に性的な気持ちよさを覚えながら、両腕を縛るのを早々に諦め、指示された通りにネクタイで両目を隠す。そこに戸惑いも躊躇いもなかった。これなら簡単だと思うのが先だった。これなら自分でできると思うのが先だった。とっくに狂っていた。

 視界が閉ざされ、暗闇に包まれ、聴覚や触覚などの、視覚以外の感覚がほんの少し鋭敏になったような気がした。ああ、こんな状態で黛の声を聞いてしまったら、こんな状態で黛に触られてしまったら、一体俺はどうなってしまうのか。ゾクゾクして、ビクビクして。興奮しすぎて、息が乱れた。気を抜けばすぐ、欲に触れてしまいそうになった。だめ、だめ、と言い聞かせ、背中側で自分の両腕を掴んで自制する。まゆずみ。まゆずみ。まゆずみ。俺の中ではもう、黛と二人だけの世界ができあがってしまっていた。

 まゆずみ。まゆずみ。まゆずみ。まゆずみ。唇を同じ形に動かし続けて。溜まった唾をごくりと飲み込む。そして、また。まゆずみ。まゆずみ。まゆずみ。まゆずみ。期待の涙すら零れ落ちそうになりながら、自分が醜く乱れてしまうのは、相手が黛だからなのだと漠然と考える。黛だからおかしくなるのだと、良いことも悪いことも、他と比べてみても卓越しているアルファの黛だから、発情期でなくてもオメガの本能が刺激されるのだと、考えて、考えると、涎が垂れそうになった。唇を舐めて、飲み込む。まゆずみ。まゆずみ。まゆずみ。黛は、また、沈黙していた。
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