愛があなたを見捨てたとしても
そしてわたしが見たものは、

「ど、どうしたんですか?こっち、来ていいんですよ…?」

何を躊躇しているのか、靴も脱がずに玄関先で棒立ちになっているハンバーガー男の姿だった。


「そっち冷えますよね?ここ、この辺りに座ってて大丈夫です。あ、手洗うならそこ使って下さい」


もしかして、知らない女の家に上がることに対してわたしが警戒心を抱くとでも考えたのだろうか。

そんな事を考えて指さし説明をすれば、ハンバーガー男は素直に靴を脱いで洗面所に消えて行った。


それを見届けたわたしは、コンロに置かれた作り置きの鍋に火をつけた。


…ハンバーガー男は、何だか面白い人だ。



「これ、肉じゃがと鮭とお店で買ったコーンスープです。良ければどうぞ」


その後、わたしが間違えて購入した大きめの上着に身を通したハンバーガー男がすぐにリビングのテーブルの前に腰掛けた。

そして、タオルで濡れた服を簡単に拭いたわたしは、そこに出来上がったばかりの料理を置いた。

肉じゃがは母が作り置きしておいたもので、元々2人暮らしには多すぎる量だったから少々減りが早かったとしても何も言われないだろう。


…ここだけの話、鮭は冷凍食品だ。

1人分のコーンスープは半分こ、湿気てしまったハンバーガーは有無を言わさず電子レンジのお世話になった。
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