ドラマティック トレイン ~ 運命の出会いは通学中に起きる
葵からの連絡を受けた時、家に兄貴がいたので事情を話して車を出してもらい病院へと向かった。

「まさか松田社長のお嬢さんがお前にそこまでのことを…。」

兄貴は正面を向いて運転しているため横顔でしか表情は拝めないが、かなりこわばった顔をしていたと思う。
俺と松田が付き合うことになった後、松田の父親経由で縁談の断り。というか相手の変更の話が直接いったらしい。兄貴自体は『酒の席の話だから。』と初めから本気の見合いだと思っていなかったそうで、俺と松田が付き合うことになった話を聞いて驚いたそうだ。合成写真を親父に見せると脅迫された事。俺が奈々ちゃんを好きだと言いかけた事。絶対に奈々ちゃんが事故にあったのは松田のせいだ!と病院までの道のりで全てぶちまけた。以前は半信半疑だった兄貴もやっと信じてくれたようだった。

「奈々ちゃん!!!」

病室に入った瞬間に頬に強い衝撃が走り、壁へと叩きつけられた。

「っ痛…。」

「お前、あいつと付き合うことで奈々を見張って守るんじゃなかったのかよっ!!!」

殴り掛かってきたのは葵だった。病室には葵のほかに奈々ちゃんの家族と西園寺さんがいた。

「この度はうちの愚弟がご迷惑をおかけしました。」

葵に殴られて立ち上がる前に俺の代わりに兄貴が皆に謝罪をした。立ち上がると兄貴に続いて俺も深く頭を下げた。

「俺が至らないばかりに本当に申し訳ありません!!!」

頭を下げながらちらりとベッドを見ると奈々ちゃんが点滴に繋がれたまま眠っていた。

「まぁまぁ、落ち着いて。今回悪いのはどう見ても耕史くんではなく松田さんって子でしょ?」

「詳しい話は葵と西園寺君から聞いたよ。君も被害者じゃないか。」

西園寺さんが間に入ってくれるとその後に奈々ちゃんのお父さんらしき男性がそう言ってくれた。

「事の発端は全て僕なんです。本当に…本当に申し訳ありません!!今更ですが、今回の事故の原因はやっぱり松田なんでしょうか?」

「それは今、警察が調べてくれているよ。それよりも君の話を聞いて色々調べてもらっていたんだけど、2年前の証拠となる動画が防犯カメラから見つかったよ。」

良かったね。と西園寺さんが微笑んだ。

「本当ですか!?」

「さーて、やられっぱなしじゃ嫌だからこちらも反撃と行こうか!大人をなめんなよってね。もちろん、耕史くんのお兄さんも協力してくれるよね?」

「はい、もちろんです。」

その日の後、葵から聞いた話しだが事故の前に奈々ちゃんを突き飛ばした女の映像が見つかったらしい。
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