Honey Trap
Ⅷ
どうやら今年は、すっきりとした秋晴れというのはそう多くはないらしい。
今日も朝から空模様はあまり良いとは言えない。
そんな日にわざわざめかし込んでお出かけ、なんてこの上なく面倒で仕方がない。
けれども、これも平穏な高校生活には必要なこと、と割りきって準備を進める。
―――約束の日曜日。
集合場所の駅前には、私の家からなら10時半過ぎに出れば充分に余裕を持って辿り着くだろう。
たいして準備することもないし、身支度は着替えるだけ。
時間を持て余した私は、また出口のない思考に取り憑かれる。
今更迷ったってどうしようもない。
一度、足を踏み入れた迷路は、例え出口がなくてもどこに向かうかわからなくても歩き出すしかないのだから。
と、キッチンへ向かう。
考えたって考えなくたって、あるかも分からない希望に縋りつきたくて、爪を立てたくなる。
結局私だって、あの男が今まで弄んで踏み躙ってきた、頭の悪い都合のいい女たちとなんら変わりない。
家を出るまであと数時間。
5年ぶりに、私はあることを始める―――。