Honey Trap



対して私は厚手のTシャツ、シンプルなAラインのショートパンツに、タイツを合わせる。

甘さを減らすためにアースカラーのブルゾン、足元はスニーカー。

大きめのトートバッグに、少ない荷物を放り込んできた。


里央よりメンズライクにはならないよう、シルエットにほんの少しだけ "女" を残しておく。


オシャレに敏感な女子高生たちは、きっと気合いの入った格好をしてくるのだろう。

そんな中であまり気の抜けたファッションもよろしくはないので、絶妙なラインを保っておく。

流行に飛びつくような依存はせず、だからといってまるきり無頓着でもなく、オシャレはそのくらいがちょうどいい。


異性の前では、極力 "女" は出したくないのが本音だけれど。



「おまたせ〜」


里央と話している間に、いくつか改札から流れてくる人の波を見送って。

何度目かの波がやってきた時、その中から明るい声が聞こえてくる。

4人の男女が手を振りながら、私たちのもとへと近づいてくるのが見えた。



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