Honey Trap
「じゃあ、そろそろ授業再開してもいい?やべ、課題の解答も出揃ってないわ」
男の砕けた口調に重苦しかった空気が、ぱっと弾けた。
あちこちからブーイングが上がる。
「文句は受けつけません」
「もっと話聞かせてよぉ」
「はいはい、課題終わらせてからな。話があるやつは全員前出てこい」
「なんの授業か分かんないな」なんて自嘲しながら、黒板に浮かぶ白い文字をためらいもなく消していく。
妨害しようと声を上げるけれど、そんな女子たちから次々と当てられてしまう。
「おまえら完全に授業放棄しようとしてただろ?」
「だって、もう今日は終わったと思うじゃん」
「…まったく」
今日はよく喋る。
"生徒" と "教師" の立場を、否応なしに見せつけるみたいに。
「まったく、まじめに教科書とノート開いてんのなんて…」
饒舌に回る口は、次の瞬間。
とんでもないことを音にする――…