Honey Trap
頬杖を突いて外の世界に意識を逃したって、窓ガラスに映る現実が容赦なくて。
作り上げてきた世界が侵されていく。
どこまでも逃げられない現実に、瞼を下ろしてそれを遮断した。
……あぁ、私が大切にしてきたものたちが、為す術もなく亀裂から零れ落ちる。
なんのために、大事に、大事に、守ってきたんだか。
こうやって、いとも簡単に、あっけなく。
終わりはやってくるのだ。
所詮、この男にとって私の存在なんてそんなもの。
簡単に手放してしまえるようなものでしかない。
今も、あの時も。
「騒ぐな騒ぐな」
なにもなければ、噂や憶測なんてすぐに風化していく。
けれど、完全に消えることはない。
鎮火することのない残り火が、どこかで燻り続ける。