Honey Trap
「だから、いないつってんじゃん」
「えー、怪しい」
「飲み会にいたうちの誰かだろ。もうこの話、おしまいな」
あれだけ女のいる飲み会を嫌がっていたのに、本当にそんな飲み会が存在したのだろうか。
だめだ。
ひとつ疑問が湧き上がると、全ての点が繋がってしまいそう。
「飲み会ってなに?合コン?」
「うわ、絶対モテるやつじゃんね」
「……」
「黙秘とか」
男子の発言をスルーして授業の準備を始める男に、より疑惑を深めていく。
「おしまい、つっただろー」
「やっぱ怪しい」
「おーおー、なんとでも言え。別に言うだけなら構わないぞ。俺はなに言われても痛くも痒くもないからな」
気づきたくない事実はいくらでも散りばめられているのに、男の心ばかりが拾えないのは、そんなものどこにもないからなのだろうか―――。