Honey Trap
Ⅻ
…――それは4年前の夏。
私がまだ、ランドセルを背負っていた頃のこと。
「やっぱりヒロくんがいないと淋しいねぇ」
ランドセルの出番も今日で終わり。
長い、長い、夏休みが明日から始まる。
「ヒロくんが高校生の頃と変わんないよ。ほとんど会わなくなっちゃったし」
午前のうちに帰宅して、すでに午後からの時間を持て余していれば、私に言うでもなく祖母が淋しそうに呟く。
淋しいのは祖母の方なのだと思う。
祖父が昨年、他界してからは急に老け込んでしまったみたい。
この4月から、男は大学進学とともに隣家を出ていった。
私はいまだに小学校すら卒業していない。
出会った時の男と同じ、小学6年生になっていた。
とことん、開いていくこの差はなんなのだろう。
年齢差だと言われればそれまでだけれど、お互いに同じ年数を経ているのに。
5歳と11歳より、12歳と18歳の方が差は埋まると思っていた。
でも現実は、小学生と中学生、高校生、大学生、と年齢差以上に距離は遠のいていくばかり。