Honey Trap




…――それは4年前の夏。


私がまだ、ランドセルを背負っていた頃のこと。



「やっぱりヒロくんがいないと淋しいねぇ」


ランドセルの出番も今日で終わり。

長い、長い、夏休みが明日から始まる。


「ヒロくんが高校生の頃と変わんないよ。ほとんど会わなくなっちゃったし」


午前のうちに帰宅して、すでに午後からの時間を持て余していれば、私に言うでもなく祖母が淋しそうに呟く。


淋しいのは祖母の方なのだと思う。

祖父が昨年、他界してからは急に老け込んでしまったみたい。


この4月から、男は大学進学とともに隣家を出ていった。

私はいまだに小学校すら卒業していない。

出会った時の男と同じ、小学6年生になっていた。


とことん、開いていくこの差はなんなのだろう。


年齢差だと言われればそれまでだけれど、お互いに同じ年数を経ているのに。

5歳と11歳より、12歳と18歳の方が差は埋まると思っていた。

でも現実は、小学生と中学生、高校生、大学生、と年齢差以上に距離は遠のいていくばかり。



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