Honey Trap



家の中。

密室。

大人の男女。



全身の汗がすごい。


この先で、いったいなにが行われているというのか。


今までにない状況に、呼吸がままならないくらい気持ちが逸る。

そのわりに体は重くて、階段を上る足取りは手すりを支えにしないと進まない。


相変わらず、物音ひとつしない。

人の温度をまるで感じさせない。


この静寂が、怖い。



ようやく階段を上りきる。

ゆっくりと廊下を歩いて、突き当たりのドアの前。

そうっと、ノブに手をかける。


呼吸を整えると、自然体を装ってドアを開けた。


「ヒロくん?」



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