Honey Trap

ⅩⅤ




「おはよう」

「おはよう、美千香」



クリスマスの朝。


部屋のドアを開けた横の廊下にクリスマスプレゼントが置かれるようになったのは、中学生になってからのこと。

小学生の頃までは朝、目が覚めると枕元にあるのが当たり前だった。


だから中学1年のクリスマス、枕元になにもないのを確認して、さすがにもうサンタさんは御役御免かと思ったのに、部屋の前にプレゼントが置かれていて驚いた。


それはパパとママからの愛情だって分かっている。

今だけはいろんな憂い事を吹き飛ばすように、その愛情をしっかりと受け止めようと思う。


「今年もサンタさんからプレゼント貰えた」

「よかったわねぇ。今年はなにかしら?」


リボンを解いて包みを開けると、ルームウェアで有名なブランドのカーディガンが入っていた。


「わ、あったかそう」

「あら、いいじゃない。かわいいわね」


きっとママが選んだであろうそれを広げてみせる。



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