Honey Trap
昇降口を抜けて外に出る頃には、すでに人はまばらだった。
校舎内にいた時はもう少し人が多いような気がしたけれど、部活動に残っていた人たちがいたからか。
帰宅の波に乗り遅れた私たちは、人の流れに急かされることもなく歩みものんびりしている。
1人、また1人と時折、私たちのわきを通り過ぎていく。
「なに、あの人」
「え?」
「ほら、あの駐車場のとこ」
「ほんとだ。うちの教師じゃないよね」
急に前2人のおしゃべりが止まって、1人が不審げな声を発する。
話題に上った張本人に気づかれないようにか、2人はこそこそとやり取りを交わす。
つられるように視線を移した私は、その姿に固まる。
「誰か待ってるんじゃね?」
「でも不自然じゃない?」
「ね。生徒の家族っぽくもないし、誰か先生の知り合いかな?」
安易に結論づける和田くんに、こういう勘はやっぱり女性同士の方が働くのだろうか。
前の2人は、若い女の違和感に気づいているようだ。