Honey Trap



「なにするのっ!触らないでよ!」


鎮まるどころか、更に興奮して喚き散らす。


ほらね。

綺麗事じゃあ、決して恋は成り立たない。


「ねぇ、先生呼んできた方が良くない?」

「もしかして、ヒロ先輩って稲葉先生?」


前にいた女子2人が、ひそひそと相談を始める。


「分かってるんなら、早く呼んできなさいよ!」


関係ない2人まで怒鳴られていいとばっちり。

2人は怯えたように駆け出していった。



「お姉さん、かわいそう」

「…ッ、」


4年前の台詞をなぞると、露骨に女が反応を示す。

酷く冷めた声だと、口にしてから自覚した。


まさか、今になってこの人と再会することになるなんて。

さすがにここで対峙してまで、里央たちの前で自分を取り繕えるとは思わない。



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