Honey Trap



―――4月1日。



……カチャリ。


インターホンを鳴らすと、しばらくしてそのドアは開いた。

ゆっくりと押し開けられたドアの向こうから覗くのは、4年ぶりに見る男の姿。


「……」


本当に、


(ヒロくんだ)


私はその日、隣家の男の家を訪ねていた。


懐かしさに胸が掴まれそうになるのを、く、と唇を引き結んで堪える。


相変わらずの冷めた瞳。

けれども見慣れたはずのその顔は、知らない大人みたいな顔をして私を見下す。

変わっていないようで、変わっている。


「久しぶり、ヒロくん」


負けてはいけない。

この男の手中に落ちれば、私に勝ち目はない。



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