Honey Trap
「あそこでグレースが毅然と言うのがいいよね。 "私は私のために生きているの、誰であろうと私を縛ることはできないわ" って、もう…!」
「私もあんなかっこいい女性になりたい」
「ね!超憧れる!」
「おまえら充分、強い女だと思うけどな」
「はぁ?どういう意味よ?」
よっぽど好きなのか、里央は主人公の台詞を真似して隣の女子に共感を求める。
それにもう1人の女子も同調すればこの中で唯一の男子、和田くんは慣れたものなのか皮肉を飛ばす。
「やっぱ男はな、1人で生きられそうな強い女より、守ってあげたくなるようなか弱い女の子の方が好きなんだよ、清水さんみたいな。ね?」
いつの間に私の真横に立っていたかと思うと、馴れなれしく肩に手を置くから条件反射で払いのけそうになる。
(…女に幻想を抱きすぎ)
なんとか衝動を抑えると、代わりに心の中で悪態を吐く。
そう見える女ほど、内心は強かで自分を完璧に見せる術を知っている。
男の庇護欲を煽るような "か弱い女の子" なんて、そうそう天然物にはお目にかかれない。