Honey Trap



「ちょっと、美千香が穢れる」

「ひでー!俺はバイキンかよ」


穢れるもなにも、貞淑さなんて疾うの昔に置いてきた。

清廉潔白とはほど遠い生き方をしているのに。


人の内側なんて、他人には理解しようがないということだ。


「おまえらみたいな気の強そうな女より、清水さんみたいな小さくて、色白で、ふわふわした子が男は好きなんだよ。そんなんじゃモテねーぞ」

「自分だってモテないくせに偉そうに。それはあんたの偏見でしょうが」


同感ね。女に理想を押しつける男はモテないわよ。


「てゆうか、美千香は男に頼って生きるような卑怯な女じゃありません」


そう言って私を庇うように抱き寄せる里央は、まぁ、この中なら "友達" をやっているぶん、私のことをそれなりに分かっている。


「そうね。少なくとも和田くんが思ってるような性格ではないかな」

「え、そうなの?意外と怒ると怖いとか?」

「あのねぇ…。美千香はちゃんと芯のある子なの」


呆れた様子の里央に、彼は人はいいけれどあまり聡くはないのかもしれないとぼんやり留めておく。



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