Honey Trap



早々に太陽が眠りに就いた、午後5時過ぎ。



厚く閉ざされたカーテンの中、煌々と煩い蛍光灯の白色のもと。

照らし出されるのは、男女の痴態。


とてもじゃないけど、その場には似つかわしくない行為が行われていた。


テレビは政治家の汚職事件を延々と垂れ流し、テーブルの上には開きっぱなしの参考書、中途半端に乱された衣服は身につけたまま。


波打つシーツの中で、組み敷かれた体が揺れる。

男が欲を打ちつける。

私は熱を受け入れる。


どこまでも普段通りの日常の中で。

私たちだけが、非日常。



それは、私たちの暗黙のルール。



暗闇は虚しい行為の中で募る孤独を隠してくれるけれど、今はこの薄情なまでの明るさがなによりの味方だった。


この関係には、少しの綻びだってタブー。

世間に露呈するわけにはいかないのだから。



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