Honey Trap



……不思議。


冬のどこまでも深い夜の闇に沈んでいるよりも、どこにも隠れる隙なんてない明るみの中の方が、上手く本音を隠せるなんて。


もしも逃れようもなく深い闇の底に堕ちて、頼れるものがお互いの熱と輪郭しかなくなってしまったら。

私はそれにしがみついてしまうだろう。

そうなればきっと、秘めた愛しさが、心に留めきれずに男に伝わってしまう気がした。


どうか今はまだ、このなんの意味も、生産性もない、ぬるま湯の中にいさせてほしい。



「……なぁ、なに、考えてんの?」

「………っ、」


男の声に意識が現実に戻される。

つ、と胸元をなぞる指先に、甘く鳥肌が立った。


瞳の奥は熱を宿しているのに、口元に浮かぶ笑みは酷く冷たい。


「……考え事とか、…ずいぶん余裕じゃん?」

「っあ、」


引き抜かれた熱が、グ、と奥深くを貫く。

突然の衝撃に思わず声を上げた。



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