社長は身代わり婚約者を溺愛する

第19話 別れてほしい

「礼奈……」

信一郎さんの顔が歪む。

「どうして、否定しないんだ。」

私は息をゴクンと飲んだ。

「……もう、終わりにしたい。」

下沢君の視線を感じる。

「気づいていると思うけれど、この前芹香と会った時、私見てたの。」

「ああ。」

信一郎さん、それがどうした?という返事だ。

「会話も聞こえていた。信一郎さんのご両親、芹香との結婚に、乗り気だったじゃない。」

「そうだな。」

「あれじゃあ、芹香と結婚するしかないじゃない。」

辺りがシーンとする。


さっきまで、あんなに空気が爽やかだったのに。

今は、重くて仕方がない。

「俺は、礼奈と結婚する。」

私は、もう笑うしかなかった。

「ありがとう。でも、信一郎さんの意見だけで、どうにかできる状況じゃないと思う。」

そう、信一郎さんのお父さんも言っていた。

もう、結婚を決めろって。
< 181 / 269 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop