社長は身代わり婚約者を溺愛する
何で、芹香なの?

何で、私じゃないの?

自問自答しても、何も答えは出てこない。


「そうなんだ。」

「そうなのよ。」

下沢君は、集めた書類を揃えて、私の元に持って来た。

「だったら、忘れなよ。社長の事。」

「下沢君……」

「俺が、忘れさせてやるって。」

下沢君は、後ろのデスクに書類を置くと、私を抱き寄せてくれた。

「な。俺にしとけ。」


その時、書庫のドアが開いた。

その隙間から姿を現したのは、信一郎さんだった。

「信一郎さん!」

「社長……」

だけど、下沢君は私から離れようとしない。

「礼奈、そういう事?」

信一郎さん、やけに冷静だ。

「もうそいつと、デキてるの?」

何で、否定しないのかは、自分でも分からなかった。
< 180 / 269 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop