社長は身代わり婚約者を溺愛する
「ええーっと……お父さんが何て言うか。」

するとお父さんは、信一郎さんの話を聞いていたようだ。

「いいよ。納品だかなんだかってやろうじゃないか。」

「もう、お父さん。結納だよ。モノじゃないんだから。」

「そうか?」

お父さんは簡単に笑ってくれちゃってるけれど、私には荷が重い。


あの芹香の食事会を盗み見した時に、信一郎さんご両親は、芹香にベタぼれだった。

案の定、初めて会いに行った時も、冷たい視線が私に降り注いだ。

またあんな風な視線を浴びせられるのかな。


「またな、礼奈。」

「あっ、うん。」

すると信一郎さんが私の頬に、手を当ててくれた。

「大丈夫だ、礼奈。俺が壁になって、礼奈を守るから。」

「信一郎さん……」

私の肩をポンと叩いて、信一郎さんは行ってしまった。


夕食時、お母さんにもその話は伝わった。

「まあ、何を着て行こうかしら。」

お母さんは、デートに行くみたいに、そわそわしている。

「お父さんとお母さんは、呑気だね。」

私はため息をついた。


「礼奈、信一郎君が変な事言っていたけれど、あれなんだ?」
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