社長は身代わり婚約者を溺愛する
そして、翌週の週末。

近くの料亭で、黒崎家と森井家の結納が行われた。


お父さんは見慣れないスーツ。

お母さんはどこから引っ張り出してきたのか、着物を着ていた。

私は、シックに黒のワンピースを選んだ。


「料亭だなんて、楽しみね。」

タクシーに乗るお母さんが、ワクワクしている。

「私はもう胃が痛いよ。」

タクシーに乗っている間も、胃が痛いのは治まらない。

料亭に着いた時には、痛さが半端なくなっていた。


「礼奈。もう腹をくくれ。」

「うん。」

もう大蛇が出ようが龍が出ようが、構わない。

信一郎さんとの輝かしい未来の為に、戦おう!


3人で部屋に案内されると、まだ黒崎家は来ていないらしい。

「待ち合わせ時間の10分前か。早く来てよかったな。」

お父さんが、安心したように言う。

「お相手の方を待たせていたら、何を言われるか分からないものね。」

「本当だ。」

お父さんとお母さんは、笑う余裕があるけれど、私は吐き気がしてきた。

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