社長は身代わり婚約者を溺愛する
後は黒崎家を待つだけ。

だけど、待ち合わせの時間になっても、信一郎さん達は来ない。

「道路混んでいるのかな。」

「準備に戸惑ったとか?」

何か、格式高そうな二人だったから、遅刻するなんて珍しいと思った。

でもさらに驚いたのは、待ち合わせの時間を10分過ぎても、来ない事だ。

「本当に今日の日でいいんだよな。」

お父さんが不安になる事を言いだした。

「ちょっと、信一郎さんに聞いてくる。」

私は立ち上がると、部屋を出て廊下に出た。


その時だ。

「早く、相手の家はもう待ってるんだから。」

信一郎さんの声が聞こえた。

「信一郎さん!」

私の声に振り向いた信一郎さんは、とても申し訳なさそうな顔をしていた。

「ごめん、礼奈。遅くなってしまって。」

「ううん。どうしたの?」

「いや、その何と言うか……」

私達が会話をしている側を、信一郎さんの両親が素通りしていく。

私の事、眼中にないって感じ。

「すまない。両親がこの結納、乗り気じゃないみたいで。」

「えっ……」
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