社長は身代わり婚約者を溺愛する
大きな声を出すお父さんを、何とか抑える。

「礼奈さん。婚約期間中、信一郎さんに相応しい恰好をしてくださいね。」

「……それはどういう事ですか。」

「普段のね、お家にいる格好で、外に出ないで下さいと言う意味よ。」

信一郎さんのお母さんが代わりに応える。


「いいんですよ。お好きな値段を言って頂いて。数百万くらい直ぐ準備できますから。」

お父さんが手をぎゅっと握った。

芹香の時は、そんな額じゃなかったのに。

私達の事を明らかに、見下している。


「お父さん、お母さん。」

私は怒りを抑えながら、口を開いた。

「私を気に入らないのなら、それでいいです。」

「何ですって?」

「ただ、私の両親に、そういう口を利くのは止めて頂けますか。」

増々、信一郎さんのご両親の視線が、冷たくなる。


「信一郎、この話。一旦、止めた方がいいんじゃないか?」

信一郎さんのお父さんが、立ち上がる。

「そうね。礼奈さんにはもう少し、お勉強して頂かないと。」

信一郎さんのお母さんも、続いて立ち上がった。

「待って下さい。」

信一郎さんが、二人を止めた。
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