社長は身代わり婚約者を溺愛する
乗り気じゃないって、どういう事?

信一郎さんの両親は、私との結婚を反対しているって事?


信一郎さんと一緒に部屋に入ると、それぞれの両親達が挨拶をしていた。

「申し訳ありません、遅れてしまいまして。」

信一郎さんのお父さんの、心のこもっていない謝罪。

「信一郎の母でございます。」

お母さんの笑顔のない表情。


どうして?

受け入れてくれるって、あの時言ったじゃない。


私は、お父さんの隣の席に座ると、こんにちはと挨拶した。

返事はない。

まるでここに私がいないみたい。


「ところで、結婚式はいつにしますか?」

お父さんが、場を盛り上げようと陽気に話しかけた。

「それは、若い二人に任せましょう。」

信一郎さんのお父さん、自分には関係ないっていう感じ。

「それより、結納金はどうしますか?」

「結納金?ああ……」

お父さんとお母さんは、顔を見合わせた。

「結納金はいいですよ。芹香さんとの事も聞いてますし。」

お母さんが言うと、信一郎さんのお父さんが無表情で舌打ちをする。

「黒崎家の嫁になるのに、見すぼらしい恰好でいられたら、困るんですよ。」

「見すぼらしい⁉」
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