社長は身代わり婚約者を溺愛する
「信一郎さん……」

私も信一郎さんをぎゅっと抱きしめた。

「私、悲しい。」

「礼奈?」

「結婚するんだったら、皆に祝福されると思っていた。」


信一郎さんは、もっと強く私を抱きしめてくれた。

「俺もだよ。」

そうだ。信一郎さんは、自分の両親に結婚を反対されているんだ。

「……っ。」

「礼奈、泣くな!」

苦しい。辛い。

この世の現実を、皆背負ったみたいに悲しい。


「信一郎君。俺達も、ちょっと考えるかもしれない。」

「お父さん!」

今度は私のお父さんも、変な事を言いだした。

「愛する娘を、反対している家に嫁がせていいものか。」

「それは安心してください!俺がちゃんと守ります。」

信一郎さんの力強い言葉に、また涙が出そうだ。


「私達も帰るわ。」

お母さんが立ち上がる。

「そうだな。」

お父さんも帰る気満々だ。
< 258 / 269 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop