社長は身代わり婚約者を溺愛する
私は信一郎さんと顔を合わせた。

エレベーターは、一番下の階に降りた。

「社長、とりあえずお疲れ様でした。」

下沢君が頭を下げる。

「ありがとう。」

信一郎さんは、下沢君の肩を叩いた。


私と信一郎さんは、エレベーターを降りて、ビルを出た。

「あっけなかったな。」

信一郎さんの頬を、柔らかい風が撫でた。

「行こう。」

私は信一郎さんの腕を掴んだ。


信一郎さんは、自分の車に乗って来て、私を助手席に乗せてくれた。

「俺の家でいいよね。」

「うん。」

早く信一郎さんを癒してあげたい。

私はそっと、信一郎さんを見た。

目の下に薄いクマがある。

昨日の夜は、眠れなかったのかな。


しばらくして、信一郎さんのマンションの前に着き、私達は車を降りて、マンションの中に入った。

マンションのエレベーターは、ゆっくりと上がって行く。

その間、私達には会話がなかった。

ただ黙って、側にいて欲しいだけだと思ったから。
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