社長は身代わり婚約者を溺愛する
そう言うしかなかった。

芹香の気持ち考えたら、確かに気持ち悪いよね。


「でも、これだけは解って欲しい。」

「礼奈?」

「信一郎さんは、私にとって運命の人なの。」

私と芹香が、お互い見つめ合う。


「だから?」

「えっ?」

「だから何なの?今まで通り、私の名前を語って、黒崎さんに会うって事?」

私はゴクンと息を飲んだ。

そして私は悟った。

もう芹香として、信一郎さんに会えない事を。


「分かった。私が礼奈だって、言えばいいのね。」

「当たり前でしょう?」

私はチラッと、芹香を見た。

「もし、私が芹香じゃないって言って、もう信一郎さんに会えなくなったら……」

私の目に、涙が溜まった。

「だとしても、それは私のせいじゃない。黒崎さんのせいでしょ。」

私は、芹香の尤もな意見に、何も言えなかった。
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