海色の世界を、君のとなりで。
***
ヒュー、と小さな音が聞こえた次の瞬間。
────ドンッ。
視界いっぱいに、大きな花がひろがった。
その迫力に、思わず息を呑む。
呼吸が、止まったかと思った。
あまりに美しくて、言葉が出なかった。
目を見開いて、満開の花によって彩られている夜空を見つめる。
……こんなに、綺麗だったんだ。
心臓の音と花火の音が、同じくらい大きく響いている。
本当に綺麗なものを見たとき、人は声を出すことができないのだと。
心が震えるほど感動したとき、声は声にならないのだと。
そう、認識させられた。
魂を抜き取られたように呆然としながら、空を瞳に映す。
次々とあがる花火は、夜空を彩っていく。
赤、黄色、オレンジ、緑。
色鮮やかな世界が目の前に広がった。
「綺麗だね……」
夜空を見上げながら、感嘆の声を洩らす可奈。
その声を聞きながら、わたしは夜空から目を離せないでいた。
花火なんて、小さい頃から何度も見ていた。
花火を見たのは、決してこれが初めてではない。
それなのに、どうして。
こんなにも心が動かされるような気持ちになるのだろう。
心にぽっかりと空いた隙間をあの一瞬で埋めてしまうような、そんな圧倒的な力。
泣きたくなるくらい、綺麗で、美しくて。