海色の世界を、君のとなりで。
「ねえ」
突然降ってきた声に、顔を上げる。
そこには、にっこりと笑みを浮かべる一人の少女がいた。
年は、自分と同じくらい。
それでもお姉さんのようにも年下のようにも見えてしまう、不思議な雰囲気の子。小説や漫画のように形容するなら、花のような子だ、と思った。
彼女の周りだけがふわふわとあたたかく、柔らかい空気に包まれているような気がした。
優しげにこちらを見つめる瞳は、慈愛に満ちていて。まるで自分とは正反対だ、と少しだけ恨めしく思ってしまう。
黙って見つめていると、ふっくらとした彼女の唇がわずかに動く。
「海って、青いんだよ」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
────海って、青いんだよ。
だから、なんだって言うんだ。
俺の病気が治らないことを知って、こんなことを言っているのだろうか。一生海を見ることなく死んでいく俺を可哀想だとでも思ったのだろうか。
それならせめて、言葉で伝えてあげようと。
そんな半端な優しさなんていらない。
自分勝手な思考に堕ちていく。
こいつも周りの人と同じ、俺に対して腫れ物を扱うように話しかけてくるのだと。
落胆すると同時に、そりゃそうかとどこか諦めのような気持ちもあって。
「だから……なに」
そんな可愛げもない言葉が口をついた。
それでも彼女は気分を害したようすもなく、にっこりと笑って告げる。