海色の世界を、君のとなりで。

「あー」


そのとき、隅の方から落胆の声が聞こえた。

視線を遣ると、ガコン、という音とともにボールがリングに跳ね返って落ちてくるところだった。

どうやらレイアップが外れたらしい。

パタパタとボールに近寄る女子を目で辿る。


「ごめんなさい、みんな」


謝罪しながらボールを拾っていたのは可奈だった。

謝罪を聞くより先に、一斉に皆が走り出す。

可奈もボールをコートの隅に置いて、少し遅れて走り出した。


「栞!」


名前を呼ばれて我に返る。

ものすごい速さで飛んできたバスケットボールをなんとかキャッチし、シュート体勢をつくる。


……可奈、大丈夫かな。


頭の隅でそんなことを思いながら、ワンフェイクを入れてディフェンスをかわし、ゴールめがけてシュートを放った。
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