海色の世界を、君のとなりで。
***

「成瀬ちゃん、ちょっと」


練習終わり。

着替えをして鞄の準備をしているところで声がかかった。

手を止めて、鞄を置いたまま立ち上がる。


「はい」


頷いて部室を出る。

眉間に皺を寄せて歩く真波先輩に連れられて、体育館倉庫までやってきた。

ドク、ドクと心臓が嫌な鼓動を繰り返している。

今日は何を言われるんだろう、と逃げ出したい気持ちになりながら、拳を強く握りしめた。


「今、何月?」

「……七月、です」

「インターハイまであと何ヶ月?」

「一ヶ月も、ありません」


まるで尋問だ。

ひやりと汗がこめかみを伝う。


「だよね?あんなフリーのシュート、外されたら困るんだけど」

「……すみません」

「ポジション取りも上手くできない、シュートは外す。だったらあなたいったい何の役にたつわけ?」


ぐっと言葉に詰まる。

真波先輩の言う通りだ。

それは自分だって承知している。

押し黙ったわたしに、真波先輩は一歩近付いた。


「あたしはね、麗華に勝たせてあげたいの。あの子がどれほど頑張ってきたか、どんなにチームのために尽くしているか、あなた知らないでしょう?」
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