君への想い、この音にのせて〜こじらせ幼なじみの恋の行方は〜
私の肩を抱いた相手を見上げると、十也くんが無表情で先輩を見ていた。
「なーんだ、残念」
そう言うと先輩はどこかへ行ってしまった。
「大丈夫か?俺のとか言ってごめんな」
「あ、うん、大丈夫。ありがとう、助かった・・・」
本当に助かった。
正直、あの先輩を納得させるのは難しいと思っていたから。
「もう帰るだろ?家まで送るよ」
「え、いやそんな、悪いよ」
「あんな目に合ったあとだし、こういう時は遠慮しない」
「え、あ・・・うん、ありがとう」
助けてもらったうえに、送ってもらうことになってしまった。
少し後ろめたさを感じるのは、奏が知ったらいい気はしないだろうと思うから。
あぁ、うまく断れない私も情け無い。