NGなきワル/バイオレンス長編作完全版!👉自らに過酷を課してのし上がったワルの非情とどうしようもない”ある焦がれ”…。
その9



「よし…、わかった。ノボルさんには、オレからさりげなく進言してみるわ。何しろ、我々がやくざ予備軍ではない立場での非合法経済活動を起こす上で、記念すべき拠点作りになるんだからな…。相和会のお膝元でどこまでやれるかってこともあるが、完璧を目指すセオリーの放棄はリスクになるし…」

「その通りだ、椎名。ノボルさんが本郷にますます度を超えてまで熱くなるれば、そのリスクは”チーム大打”に致命傷をも負わせかねん。今のうちに、オレたちでうまく誘導していこうや。オレ達のやろうとしてることは、ガキのケンカとは違うんだ。極めてデリケートなビジネスになるんだからな…」

「うむ…。だが、本郷はかなりの確率でオレ達が手を下すことになるぜ。その際、お前、本当に大丈夫なんだな!」

ここでの椎名彰利は、同郷の幼馴染であるタカハシがかつて感じたことのない迫力を伴った物言いであった。

...


「ああ、その時が来ればオレは殺人コーディーネーターとして徹し、あらん限りで力を尽くす。それでも、ガキ市場を確立させ、かつてなかったシノギのパイプラインを開拓するのがメインロードと心得ている。それ、異論ねーんだろ?」

一方のタカハシも、あえて九州訛りを封印しての強い口調で椎名に跳ね返した。
それは互いに、この時期だからこその、心の踏み絵を迫りあったコアな相互確認の場であったのだろうか…。

「ない!…だが、オレ達はNGなしの究極道を選択した立場なんだ。ダーティーな仕事や冷酷な判断は避けて通れない。その為には、目の前に立ちはだかるであろうターゲットに熱くなることすべてまでは否定しない。オレはそう思ってる」

「オレも椎名の考えには異議なしさ。その為に、この都県境で麻衣を始め、猛る女どもを市井に潜ってまでリサーチしてきたんだ。彼女らには、いざって時に見誤りのない対処と心の持ちよう…、それを得続けられることが必要だと承知していたからだ。それで自らを”納得”に導いた。今さら迷いもないさ。その局面に来れば躊躇もなくことに当たれる。…とにかく、ノボルさんの方は頼む」

「了解したよ、ミチロウ…」

この時の椎名とタカハシの間で交わされた、NGなき男達のスタンスに於ける微妙な隙間は、4人の間にも決定的な影を落としていくのだが…。
しかし、それはもう少し先のことになる…。




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