NGなきワル/バイオレンス長編作完全版!👉自らに過酷を課してのし上がったワルの非情とどうしようもない”ある焦がれ”…。
その10


東京郊外に位置するH市繁華街に佇む通称サラ金ビルの一室では、チーム大打のトップ4人が集まり、まさに激論が展開されていた…。

「…オレは反対ですよ!本郷麻衣と直接接触するのは、事前に皆で武次郎さん止まりと決めていた。ましてや、麻衣と撲殺人の婚約披露のセレモニーを控え、やたらなリアクションはそれこそ、”先方”の格好の攻撃材料にされかねない。今のタイミングで、ノボルさんが麻衣に面と向かうのは避けるべきです!」

タカハシは渾身の思いで、チーム大打のモブスターズ仲間3人に熱弁を放っていた。
その彼には、椎名も同調した。

「オレもタカハシの意見に賛同するな。少なくとも、ノボルさんが麻衣と接するのはヤツと撲殺さんの婚約披露後…、その影響度合いを精査、見極めした後にすべきですって。ここは極めて慎重な姿勢が欠かせない。そのことに尽きます!」

椎名はメリハリの利いた説得力たっぷりの口上を発した。
そして…、しばらく間を置いてから、ノボルが口を開くのだった。

...


「そりゃあ、セオリー通りで行けば、ここはこの武次郎で留めるべきさ。その前提だったしな。今タカハシが言った、この4人での取り決めは…。だがよう…、まずはだ、オレが麻衣への接触を温存してる間、ヤツがなにをやらかしてきたか、しっかり思い浮かべてみろって!」

「…」

これには、椎名とタカハシも神妙な面持ちでやや俯いてしまった。

「…自分へのお誘いでは足蹴にした星流会のトップへは、”生爪”をプレゼントしておちょくったのを皮切りにだ、東龍会が目をつけていたネタ元の旧建田組のチンピラを拷問した実況テープは各所へ宅配だぜ」

「…」

「…しかも、”ナマ指”はとりたての新鮮なパック状態で、ご丁寧にココのビルへ送りつけてきやがった。前日に面と向かってケンカを吹っ掛けた武次郎宛でな。それどころか、そいつらと通じてたガキルートから、東龍会の”走りっ端”を洗いだし、バグジーを従えての締め上げだ。それ、ジャッカル・ニャンに乗り込んできた、その日に挙行したんだぞ!」

ノボルの顔はほのかに紅潮していた。
これは、同席している3人の知るところでは、極めて珍しいコトだった。

...


「…麻衣を通じて、こっちサイドの仕込んだネタは、もう相和会に知られてるだろうよ。ヤツは対関東の情報戦でも中心にいるんだ。その主導はあくまで本郷麻衣であって、ヤツは倉橋さんや剣崎さんの指示通り動いてる人形って訳じゃあないんだよ!オレはこれまでも、タカハシから麻衣に関してはこと細かく聞いてるし、武次郎とのやり合いの様子も報告を受けた。こうなりゃあ、今の時点まで着てんだ。直接麻衣本人と面通ししなきゃあ、それこそ耳年増になっちまうって。相手はただのセブンティーンじゃんねーってことを、お前らも今一度肝に銘じて欲しい…!」

ノボルにしてはやけに熱弁調になっていたせいか、他の3人はやや戸惑いの様子を隠せなかった…。

”うん…、ここまで麻衣がフル回転の現状を鑑みれば、ノボルさんには生の麻衣を今ここで、自身の眼に刻んでもらうことは必要かもな…”

椎名は頭の中でそんな思いに至っていたのだが…。





< 151 / 174 >

この作品をシェア

pagetop