NGなきワル/バイオレンス長編作完全版!👉自らに過酷を課してのし上がったワルの非情とどうしようもない”ある焦がれ”…。

チャプター20/灰汁の器~赤と黒、壮絶の各々なカタチ

作者より👉本チャプターは、前チャプターとの間に本作構成上挿入を見送ったエピソードがあります。よろしければ先に『ヒートフルーツ』全編版第3部25章を閲覧していただければと存じます!





その1



「…はあ、はあ。冥途に発つ前に…、私からも、自己紹介だ。その片耳で…、しっかり聞け…!はあ、はあ…、私は本郷…、本郷麻衣…。はあ、はあ…、相馬豹子も…名乗ってる…、年明けには、倉橋…、麻衣になる…」

すでに聴覚は片耳に頼る他ない凄惨な身の上となった、通称、北海道の秒殺オオカミは、先刻まで自身の視界に捉えていた赤い血しぶきが、もはや自らの体内から激痛を伴って噴血するそれと入れ替わっていたことを認知せざるを得ないでいた…。

一瞬を制してきた者の、”その許し犯した一瞬”は、あまりにも無残かつ過酷な現実を自らにもたらしたと言える。

「おい…、警察はもう来る!オオカミを早く連れて急ぐんだ‼耳など放っておけ!」

三貫野ミチロウがタカハシとなって、初めてパニクっている様が、おそらく、ここでのすべてを物語っていたのだろう…。

...


数分後…、木枯らし一号の激風が吹きすさぶ中、その静寂は一人の少女に吸い寄せられるようだった。

自ら流した血と返り血にまみれた本郷麻衣は、絶命を以ってその絶走の証とした。

本郷麻衣がその一命を賭したこの場所に、心を揺るがせた仇敵、大打ノボルの姿はなかった。

だが、麻衣は確かにノボルと戦っていた。

最後まで己の生き様で生き切ることで…。





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