親が体験した怪奇譚/短編ホラー集ー家族愛編ー
その2



「俺たちが”あんなこと”を思いついたのは、オヤジ…、ああ、清子のおじいちゃんからある話を聞いたことがきっかけだった」

私の父方の祖父は私が物心ついた頃には亡くなっていたので、どんな人かは良く知りませんでしたが、大変な秀才で、生真面目な人だったと聞いていました。

一方、子供の頃の父はワンパクで、言わば典型的なガキ大将だったようです。

「…おじいちゃんな、その頃、俺が年中川原で仲間集めて遊んでるのを妙に気にしてたんだ。節分前後は川原には行くなとか、川に何か投げ込んだりしちゃダメだとかってな」

私はとっさに”節分”という言葉が気になりました。
まあ、漠然とでしたが…。


...


「それで、オヤジにははっきり聞いたんだ。あの川原、何かあるのかって。そしたら、オヤジ、話してしてくれたよ」

おじいちゃんの話は、自分がやはり子供の頃、その川原で友達と遊んでいた時のことだったようです。

その頃はまだ、東京都内のゼロメートル地帯を流れるその川には堤防が整備されておらず、時折”水”が出たようなんですが、地元のお年寄りは、川の水はいろんなものを飲み込む怖い存在と捉えていたようなんです。

でも、好奇心旺盛な下町の子供たちは、節分の時期にかこつけたある”儀式”を造り上げ、その原型はずっと伝わり続けたんでしょう。

おじいちゃんの時代にも、その”儀式”は子供社会の中に、根強く浸透していたそうです。
”儀式”は、その時代の悪ガキによって、時たま行われました。

...


「…じゃあ、おじいちゃん、悪ガキ達に断りきれず、そんないかがわしい儀式に加わったのね?」

「ああ。それで、その儀式を率先していたリーダー格2人がね…」


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