時間が戻った令嬢は新しい婚約者が出来ました。

第三十六話 経験値はない

オズワルド様が寝室へ戻り、一人寝支度の為、バスローブのまま残った私はただ、突っ立っていた。

この雰囲気でどうやって一緒に寝ろと!?
着替えたら行きますって、言っちゃったし!
私のバカ!
でも、心は開いてます、とは言ったけど股を開くとは言ってない!
オズワルド様は意外と優しいからきっと無理にはしないはず!
さっきだってあれ以上はしなかった。

今日、レオン様にハッキリ言ったからか、アレク様に、オズワルド様をお慕いしてますと言ったからか、オズワルド様はどこで火がついたのか。

しかも、さっきの雰囲気作るのも上手かったし、これが経験値の差かしら…。

とりあえず、また来たらどうしていいかわからない為、ナイトドレスに着替えた。

どうせ寝るだけ、と自分で暗示のように何度も何度も頭の中でこだましていた。

よし! と拳を握りしめ、オズワルド様の寝室に行くと、すでにオズワルド様はベッドに入り、座って本を読んでいた。

「リディア、遅いぞ」
「すみません……」

なんで私が謝るのか、オズワルド様のせいですぐに来れなかったんですよ!

ゆっくりベッドに近付くと、オズワルド様が手を差し出してきた。
その手は、無理矢理引き込もうとする手には見えなく、優しく見えた。
そっと手を乗せると、オズワルド様はやっぱり優しく言ってくれた。

「……心配するな。まだ、待ってやるから」
「経験値なくてすみません」

本当にすみません!
オズワルド様みたいに百戦錬磨じゃないんです!

いつものようにオズワルド様の隣に入るが、動悸がする。
そして、二人でベッドに並んで座った。
オズワルド様は手が早いが、私を大事にしてくれるから、待ってくれているのはわかっている。

「あの……オズ様……」
「リディア?」
「私……ちゃんと好きですからね……」

シーツで顔を隠し、今の私にはそう言うのが精一杯だった。






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