時間が戻った令嬢は新しい婚約者が出来ました。

第六十一話 人は似たような時間を繰り返す(アリシア)

あの日、お父様がブラッドフォード公爵に呼び出され、一緒に行くように言われた。



以前から、お父様はブラッドフォード公爵に私を薦めていたらしいが、相手にされなかったらしい。

私は金持ちのクセにいつまでも誰とも結婚しないから、どうせ大した男ではないと思っていた。

でも、最近アニスの友人がブラッドフォード公爵と婚約したらしくどんな方か聞いた。

ブラッドフォード公爵はただの金貸しではなく、資産家の公爵でスッゴく男前だと。



お父様はいつも若造だと言っていたが、お父様からしたら20代も30代も若造だから気にも止めてなかったが、ブラッドフォード公爵は本当に男前でまだ20代らしい。



だから、今回初めてお父様について行くことにした。



そして、お会いしたブラッドフォード公爵は一目惚れしそうな程、本当に男前だった。
こんな美丈夫は見たことないほどだった。



アニスの友人と婚約したらしいけど、アニスがパッとしないのだから、友人も大したことないと思ってしまう。



実際、私がブラッドフォード公爵に微笑むと、ニッコリと笑顔で返してくれた。



ワインも王宮に献上するみたいだし、ワイナリーの話を私達にわかるようにし、まるで金儲けのヒントをくれているみたいだった。



婚約は出来ないと言われ、王宮の夜会に行っていないと言われた時は恥をかかされたと思ったが、すぐに違うとわかった。

私にプレゼントを準備していたのだ。

私と婚約もしてないのに宝石をくれるなんて、私に気があるとしか思えない。



だから、わざとハンカチをレストランにわかりにくいように置いていき、お父様が出かけた隙にレストランに戻った。

私はブラッドフォード公爵が私と二人になれて喜んで迎えてくれると密かに思ったのだ。

プレゼントで舞い上がっていたのかもしれない。



でも、実際は全然違った。



私がレストランに戻り、止めようとしたうるさい使用人を無視し、二階にいるブラッドフォード公爵に会いに行くと、女といた。

ブラッドフォード公爵が女の前に立っていたせいで顔こそは見えなかったが。



そして、ブラッドフォード公爵は恐ろしかった。

私が来たことに怒っていたのだ。

さっきとは別人のようで、笑顔も全くなく、恐ろしくほど怒りの様相だった。



ブラッドフォード公爵の足元からは真っ黒なものが溢れるように現れ、彼の言うように闇に飲まれるかと思うほど、冷たさを感じた。



私は、怖くなり逃げるようにレストランから出ていった。



それほどあの足元の闇はゾッとしたのだ。