時間が戻った令嬢は新しい婚約者が出来ました。
私達の後ろの廊下から悲鳴のような叫び声が聞こえ、振り向くと角にいたはずの魔法騎士が倒れているのか、角から足だけが見えた。



そして、真っ直ぐの廊下をエルサ様がまるで静寂を踏みしめるようにゆっくりと歩いて近づいて来る。


「リディア様! フェリシア様と部屋にお戻り下さい! 急いで!」


フェリシア様と私は固まっていた自覚もなく、ウィルの声でハッとした。


ウィルが私達の前に庇うように前に立ち、私とフェリシア様が足を動かした時、エルサ様の後ろからレオン様が廊下の角にもたれるように現れ叫んだ。

その姿は誰かにやられたのかふらついている。

まさか、さっきの叫び声はレオン様と思えるほどだった。



「リディア!! 逃げろ!!」



私!?

狙われているのはフェリシア様では!?


私かフェリシア様か、どちらが狙いか混乱するほどわからないが、フェリシア様は将来王妃になられる方だ。

ましてや、私達が時間が戻ったせいでこんな事が起こってしまったのだ。



私の代わりにフェリシア様に何かあるわけにはいかない。


「フェリシア様! 早く部屋に! ……っ誰か来て━━━━━っ!」


エルサ様の様子にゾッとしながらも必死で叫びながら、フェリシア様を部屋に押し込もうとドアを開けようとするが、体が追い付かない。


手が震えている実感さえもなかった。

何故近くにいた魔法騎士達は来ないのか!



そして、ウィルは攻撃を始めた。



「近づくな!」



水の固まりが勢いよく飛んでいく。その方向にいるエルサ様は手をかざし、水の固まりを弾いていた。



絶対普通じゃない! あれは魔法使いだ!!



そのかざした手のまま、魔法を向けられる。私とウィルはエルサ様の魔法で突風に弾かれるように魔法を受けた。



「キャアァァーー!」



悲鳴と共に床に叩きつけられるように倒れ、ウィルは壁に激突し、ぐったりした。



「リディア!? エルサ止まりなさい!」



フェリシア様は、もうエルサ様に敬称すらなく命令するように制した。

レオン様も後ろでエルサ様に向かい「止めろ!」と叫んでいる。

でもエルサ様は止まらない。



そして、フェリシア様の周りに縦長の丸い空間が眼を開くように現れ、ゾッとすると同時にフェリシア様が飲み込まれると思うと、考える間もなく身体が動く。

私はフェリシア様を突き飛ばし私がその空間の前に来ると、その空間の前は鎌鼬のように痛く、風がそこだけ渦巻きはじめた。



「キャア!」
「やめろ! エルサ!!」


レオン様はエルサ様を抑えたが縦長の丸い空間は消えない。

フェリシア様やレオン様が私の名前を叫んでいたが凄く遠くに聞こえるように感じる。



風が飲み込まれるように私は空間に飲み込まれながら頭にあったのは、オズワルド様だけ。その彼の名を叫んだ。



「オズワルド様━━!」



「リディアー!」



私の叫び声に応えるようにオズワルド様が私の名を叫びながらやってきた。



でも、私の手はオズワルド様に届かず、風と共にあの空間に飲まれるように吸い込まれた。



私が最後に見えたのはオズワルド様が私の名を叫びながら駆け寄って来る姿……。



まるで、あのレオン様の誕生日パーティーの控室の時のように見えていた━━━。













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