とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】


二人とも食べ終えてレジへ向かっていると、詩優さんは「いいよ、ここは俺が出すから。ゆきりんは外で待ってて」と言った。

「わたしも半分出す」

「いや、俺が誘ったし」

「そういうわけには……あっ」

うっかり財布を落とすと、適当に挟んでいたカード類がばらばらと床に散らばった。
ちゃんと整理しておけばよかった。
硬貨でないだけよかったけれど、恥ずかしい。
しゃがんで必死にカードをかき集めるわたしを、詩優さんが手伝う。

「ご、ごめんなさい」

「また敬語になってるし。
にしても、あれか。ゆきりん、けっこうドジっ子か」

「ドジっ子って」

「ドジっ子でしょう。これは」

散らばったカードの最後の一枚に手をのばすと、横からのびてきた詩優さんの手に触れた。
ひーくんと同じ、つめたい手。
ぱっと手を離すと、今度は視線がぶつかった。

困ったような顔で笑われる。

「ほら、ドジっ子は早くあっち行って」

手の甲でしっしっと追い払われ、けっきょく詩優さんがカフェ代を支払った。
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