とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「俺からゆきりんへの推薦課題図書。あげるから読んでよ」

「え、待って。あげるって言われても」

「大丈夫、大丈夫。ぜったい、おもしろいから。ゆきりんもハマるって」

「そういう問題じゃなくて」

「あ、カード一括でお願いします」

詩優さんはカウンターにどさりと単行本を置いた。
ぐらぐらと高く積まれた単行本は、店員の慣れた手つきで次々とスキャンされていく。

いくら単行本だって、これだけあったらけっこうな額になる。
気軽に受け取れるようなものではない。

「本当に、受け取れない」

きっぱりと言い切った。
それでも詩優さんはペースを崩さない。

「いいんだよ。俺が読んで欲しいんだから。
ゆきりんは読んで、感想聞かせてよ。人に貸して布教してくれてもいいし」

ふと思い出す。マットレスの話をしたときの、あの(ひと)を。

「なんか、邑木さんと似てる」

「え、俺と兄さんが?」

「うん。似てると思う」

そっか、と詩優さんは短く返した。

単行本を包んだ大きな紙袋がカウンターに二つ並ぶ。
おずおずとわたしが手をのばすと、詩優さんが二つとも手に取った。
< 185 / 187 >

この作品をシェア

pagetop