好きになっちゃ、だめでしたか?
 月曜の朝、朝食を食べ終えると家を出て留衣が現れるのを待つ。

 すると矢崎も当たり前のように来て「べつにわたしがいるからいいのに」と言う。

「べつに、俺が好きでやってることだし」

「ふうん」

 矢崎は腕を組んでいかにもなにかを察したかのように目を細めた。

「つかお前は、本当は留衣の兄貴が目当てなんじゃね?」

「な、なに言ってんの!? 違うし。い、意味分かんない」

 顔を真っ赤にして、すぐに俺とは反対側に顔を向ける。

「へ〜、違うんだあ?」

「な、なんのこと言ってるか全然分かんないからね」

 今はこうして矢崎をからかう余裕があるけれど、もし留衣が目の前に現れたら……。

 と思ったそのとき、家の扉が開き留衣が姿を見せた。

 留衣は俺の顔を見ると一瞬動きを止め、「お、おはよう」と視線を逸らす。

「おう」

 普通にしようと思っているのに、留衣の態度と自分の心臓の動きのはやさにかき乱される。
 
 夏でただでさえ暑いのに、今この数秒でさらに数度気温が上がったような気がした。

「い、一華も、おはよう」

「おはよう。ってか、なんか2人、よそよそしくない? いつもの感じと違うんだけど」

 さっきまで反対方向を見ていた矢崎は今は俺の方を向いている。

「は、はあ? いつも通りだし」

「う、うん。いつも通りだよ」

 と2人で言うものの、明らかに矢崎は怪訝な顔をし頭を傾ける。

 そして、急に目を見開き口元を緩ませた。

「あ、あ〜。そういうことね」

 完全にばれた。

 しかし、俺も留衣も矢崎になにも言えない。

「とりあえず学校行こう」と矢崎は留衣の腕を掴んだ。
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