世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
 もういつまでも”呉松家のお嬢様”でも”世界一可愛いゆいちゃん”が通用しない。世の中のシビアさをとくと肌で感じさせる時期、必要があることを自覚させる。
 それが陽鞠とうまく行く最善の策でもある。将来のためにも。
「そうだなー。何せ地元で名前が知られている家というのが大きいよな。どんだけ喧伝してたのやら。俺は良輔さんと学校一緒だったから、多少面識あるぐらい。静華さんの話はよく聞いてたけど、結花さんのことはあんまり話さなかったな。多分話題にしたくなかったんだと思う」
 あんな癖つよつよな人を身内扱いするのも恥ずかしかったんだと思う。
「もしかしたら、はるにいが狙われてたかもな」
「身内の集まりの時散々ベタベタしてきたし、職場でも甘えてきてるから、適当にあしらってる」
 その口調は不愉快さを全面に出したようなものだった。
「ほんと、うちの妻が色々トラブル起こしてすまない。職場でも好かれてないみたいだしな。ありゃ、死んでも治らないか……」
 妻がみんなからの人気者とか、何でもできるというのは幻想だった。それに薄々気付いときながら止めなかったのは、怒られるのが怖かった。家族がバラバラになるかもしれないという恐怖心によるものだ。
 心を鬼にしなければと言い聞かせる。
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